コロナ禍以降、企業のリモートワークが推奨され、人材サービスの形も変わってきている。就職セミナーや採用面接、内定式から入社手続きに至るまで、フルリモートで実施する企業も多い。そんなニーズの変化が大きい業界で、『Goodfind』などの人材サービスを提供するスローガン株式会社は、品質保証に力を入れているという。
同社は、2021年12月より第三者検証会社であるヒューマンクレスト社とパートナーシップを組み、QAチームを発足。リグレッションテストの自動化を進めてきた。
運用パートナーとともにAutifyを活用したテスト自動化のプロセスとその成果について、スローガン株式会社の渡邊恒介さん、石井宏佳さん、株式会社ヒューマンクレストの米田徹さん、大久保宏樹さんに聞いた。
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ー はじめに、みなさんの自己紹介をお願いします。
Slogan渡邊さん: スローガン株式会社のデザイン&テクノロジー部(※取材時)、部長の渡邊です。ヒューマンクレスト社に協力いただき、Autify導入を担当してきました。
Slogan石井さん: スローガン株式会社で開発を担当している石井です。ヒューマンクレスト社とともにAutifyを使ったテスト周りの作業を担当しています。
Human Crest米田さん: ヒューマンクレスト第3 Quality Solution事業部の米田(まいた)です。弊社は、いわゆる第三者検証会社で、企業のアジャイル開発の現場で、ソフトウェアテスト、QA、シフトレフト等を支援しています。今回はスローガンさんのQAチームの立ち上げからサポートしております。
Human Crest大久保さん: 同じくヒューマンクレストの第3 Quality Solution事業部で、QAエンジニアをしている大久保です。スローガンさんのプロダクトの手動テストや、Autifyを使った自動テストのシナリオ作成などを担当しています。
ー Sloganの事業について教えてください。
Slogan渡邊さん: スローガンは、新卒採用支援をメインとした厳選就活プラットフォーム『Goodfind』などの人材サービス事業を展開しています。そこから発展する形で、若手イノベーション人材向けビジネスメディア『FastGrow』の運営も行っています。そのほか子会社には1on1 支援ツール『TeamUp』を提供しているチームアップ株式会社があります。Autifyを活用したテスト自動化は、子会社のほうもあわせて検証を行っています。
ー Autify導入前、QAにおいてどのような課題がありましたか?
Slogan渡邊さん: 一部を修正したら思わぬところに影響が出てしまう、いわゆるシステムの老朽化が大きな課題でした。リリースのたびに広範囲でのチェックが必要な状況でした。社内でテスト担当を決めて自社で取り組んでみたものの、もともとテスト専任のメンバーではなく、私自身もQAをメインでやってきたわけではないので、うまく運用できずにいました。
E2Eテストの自動化も検討しましたが、E2Eテストを自社で運用する場合、そこにもエンジニアの工数が掛かります。どうすればエンジニアのリソースをテストから切り離した状態で、E2Eテストの自動化を実現できるのか…と模索していました。
ー そのタイミングでヒューマンクレストさんにご相談された?
Slogan渡邊さん: それよりも前に『FastGrow』の担当者からAutifyを紹介してもらい、まずはAutifyを導入するところから始まりました。その後、Autifyの設定をヒューマンクレストさんに相談して進めてもらいました。「QAのプロの目線をふまえて、お願いできませんか?」と相談し、自動化への入り口になりました。
ー御社のリリースの頻度はどのぐらいですか?
Slogan渡邊さん: 各プロダクトに任せていますが、週に1〜2回ぐらい、大小さまざまなものがリリースされます。
ーAutify導入にあたり、他のツールやサービスも検討したのでしょうか?
Slogan渡邊さん: いえ。最初にAutifyを触らせていただいたとき「これならエンジニアでなくても設定ができそうだ」と感じました。少なくとも、今までよりは良い状態までもって行けると思ったので、他のツールを比較検討することなく導入を決めました。
ー 「エンジニアじゃなくてもできる」ことが決め手になったんですね。ヒューマンクレストさんに相談して、実際にどのように導入を進めたのか教えてください。
Slogan渡邊さん: ひとまず社内のメンバーでAutifyを触ってみて、設定を進めようとしたのですが、他の業務も並行していたので、なかなか設定する時間が取れずにいました。シナリオ設定に取り掛かるまで、2〜3カ月ほど期間が空いてしまったんです。
「QA体制構築」をヒューマンクレストさんに依頼する段階で、自動テストはAutifyを使ってほしいと伝え、併せてお願いした形になります。
ー ヒューマンクレストさんはこれまで、Autifyを使ったQAのサポートもご経験があるのでしょうか?最初に触ってみた印象もお聞きしたいです。
Human Crest米田さん: 私は1年ほど前に、別のお客様のところでAutifyのトライアル版でテストシナリオを作成したことがありました。最初からすごく使いやすい印象があって。それまでは、自社の自動化サービスを使ったり、テストコードやスクリプトを書く研修を受けたりしていましたが、それらとは全く概念が違う、と思いました。そのくらい使いやすくていいな、という所感でした。
実際に運用はしたことはなかったんですが、Autifyだったら使えると感じていたので、スローガンさんから相談いただいたとき「大丈夫です」と言い切ってしまったんです(笑)。
ー 実際にシナリオ作成を進めてみて、いかがでしたか?
Human Crest米田さん: テストの構築からメンテナンスまで、継続して運用していくことを意識して、プロダクトのどこを見るべきか?その方向性をスローガンさんと確認して、テストケースの設計に着手しました。基本方針をベースにして各プロダクトの性質に合わせて、シナリオ一覧を作って進めていきました。
ー テストの構築は、Autifyがある場合とない場合で、何か違うことはありますか?
Human Crest米田さん: 他のツールの場合、環境依存でエラーが起きることが多いですが、Autifyはそういったエラーがすごく少ない。構築において「手間の掛からなさ」がだいぶ違うと思います。あとは仕様変更後のメンテナンスがしやすいですね。
QAのメンバーの負担にならないという安心感もあるので、より前向きにサクサク自動化を進めていくことができます。他のツールだと例えば、ちゃんと動くかを確認して、引っ掛かるようだったらウェイトを入れて…と細々した作業が必要になるんですけど、Autifyはそういうのがほぼなく、進めやすいです。
Slogan渡邊さん: 依頼側も「とりあえずAutifyで設定を進めてみてください」と伝えて着手してもらえたので、準備の手間が少なくてラクでした。Autifyじゃなかったら、QA開始前にプロダクトの使い方を説明する資料を準備する必要があります。その手間が最小限でできました。
プロダクトの開発メンバーのリソースをほぼ使わずに、自動テストが組めたのはすごくありがたかったです。QAにリソースを割くことが難しい会社にとっては、メリットだと思います。
ー「導入したはいいけれど、テストを作る時間が取れない」といったケースもあるので、ヒューマンクレストさんのようなパートナーがいるとスムーズに立ち上がりそうですね。設定はどのように進めたのでしょう?
Human Crest大久保さん: 自動化の対象がリグレッションテストだったため、各プロダクトごとに、Autifyを触りながらどこまで担保するか、シナリオを考えていきました。あとはAutifyを起動して、キャプチャーしていく、という進め方です。自分たちだけでは解決できない部分は、Autifyのサポートに頼らせていただきました。
ーまずはリグレッションテストを作って自動テストされているフェーズだと思いますが、新しいテストの追加など、どのように運用されていますか?
Human Crest大久保さん: リグレッションテストはブラウザ版は1日1回、スマホ版は週に1回、自動で定期実行しています。大きめの機能の改修があったら、まずは手動テストで機能を担保して、問題なく本番リリースされたら、自動テストのほうにも反映していく――というような流れで運用しています。
小さい改修に関しては、リリース前後にお知らせいただいてはいないこともありますが、前回と今回の比較画像が出るので差異を認識したら、エンジニアに確認しています。それから自動テストのシナリオを、その部分だけ反映しています。
ーエンジニアさんとのやりとりはスムーズにできていますか?
Slogan石井さん: はい。弊社ではコミュニケーションツールに「Googleスペース」を使っていて、メンションがあるとすぐ返していますので、そこはとくに問題はないです。
ーAutifyの通知はSlackに対応していて、Googleスペースはサポートしていないのですが…。
Slogan渡邊さん: そうなんです(苦笑)。他のツールも同じくGoogleスペースへの通知はカバーされていないことが多いので、自前で連携できるように準備をし始めています。
Human Crest大久保さん: ヒューマンクレスト社のSlackのほうにAutifyからの通知が届くようにしています。何かエラーがあればスローガンさんのGoogleスペースのほうで共有しています。
ー AutifyがGoogleスペースと連携できれば、そこに通知が来てそのままコミュニケーションが始められてかなりスムーズになりそうですね。Googleスペースとの連携については弊社内でも検討したいと思います。
Slogan渡邊さん: ありがとうございます。
ー Autifyのご契約プランを『Small』から、モバイル実機端末でのテストが可能な『Advanced Mobile』に変更いただきました。変更された背景をお聞きしたいです。
Slogan渡邊さん: リモートワークが主流になってきて、スマホの実機確認のための端末の管理が課題になってきました。それぞれ個人に検証端末を渡すわけにもいかず…。
そのため、もともとプランをあげたいと考えていました。ただ、ツールとしてAutifyをどこまで生かせるかが分からないので、最初は『Small』で始めてみることにしたんです。ヒューマンクレストさんと一緒に取り組んで、うまくできそうな目処がたったのでモバイルにも広げた、という経緯です。
ー スマホのテストはもともと実機で確認されていたんですね。
Slogan渡邊さん: 開発者ツールでエミレートしてチェックもしていましたが「最後はやっぱり実機で見たいよね」というのはあって。ただ端末を持っているメンバーがいる/いないで、メンバーの多いプロダクトと少ないプロダクトで、精度に差が出てきてしまいます。そのため、クラウドサービス上で場所を問わず実機テストができるのは非常に助かっています。
ー 導入されて、とくに活用したAutifyの機能があれば教えてください。
Human Crest大久保さん: ステップグループ機能は、ログインが必要なシナリオが複数あるので、とても重宝しています。
ー ありがとうございます。ステップグループのほうは、まもなく大きな機能追加が入る予定なので、ご期待ください。
ー Autify導入前と導入後では、どのような変化がありましたか?
Slogan渡邊さん: まずヒューマンクレストさんと一緒にQAチームを立ち上げたことで、一番多い社内の声は「テストの人がいてくれることの安心感」です。自分たちが見逃していても、なにかあったときに拾ってもらえるのは大きいです。社内の会話でも「テストのプロはやっぱりプロだよね」とよく聞かれます。以前は自分たちでテストの項目を作っていましたが、プロの視点が加わることで精度が高まることを実感しました。
またAutify導入とともに、ヒューマンクレストさんに伝えていることが「社内で、テストする文化を根付かせたい」ということです。常にテストがある土壌を、作れたことが大きな成果だと思います。
ー 社内の意識も変わりましたか。
Slogan渡邊さん: 想定していたよりは、早く浸透してきていると思います。開発チームのほうからもリリースのアナウンスをもらうことが増えました。
ー ヒューマンクレストさんの方では、Autifyを使うことによる変化をどう感じていますか?
Human Crest米田さん: Autifyの使いやすさを日々実感しています。とくにテストを構築していくときに「ちょっと違うかな」と思ったときに、軌道修正しやすいのがありがたいです。ずっとリモートでやらせていただいていますが、スローガンさんとも日々ミーティングの機会を設けてもらっていて、共有していただきながら取り組めています。
ー 導入前の「一部を修正したら思わぬところに影響が出てしまう」といった課題の部分は、Autifyとヒューマンクレストさんのソリューションで解決されましたか?
Slogan渡邊さん: その不安は解消できています。もちろん、テストの範囲を超える部分で、起きる可能性はまだ残っていて、完全に解消されたわけではありません。ですが今はサービスのメインの部分は、テストでカバーできているので、安心感が大きいです。ちゃんと測ってはいませんが、エンジニアのリソースを使わずに運用することに関しても、大きな効果が得られていると思います。
ー2社さまの今後の展望をお聞かせください。
Slogan渡邊さん: 新卒採用の市場は年々変化しています。とくにこの2年、リモートワークに移り変わっていて、これまで提供してきたものが最適な形ではなくなることも多々あると思います。プロダクト/サービスの内容も大きく変えたり、システムも作り変えていく必要がでてきます。おかげさまで、新しいことを始めるうえで、安心感をもって取り組める土台ができました。
6月から社内の体制が変わり、私はQAチームから離れることになりました。この半年で整備を進めて「雛形」のようなものができたので、安心して任せられます。また新たなメンバーで品質を担保して、より良く進めていってほしいです。
Human Crest米田さん: QAのチームが立ち上がり回りだしている状況ですが、お客様にもっと安心感を持ってもらって、開発がスムーズに進められるよう支援していきたいです。今はE2Eの自動テストと手動テストをしていますが、例えばAPIなどもっとシフトレフト的なテストや、仕様面でのフィードバックができるようにしたいです。
Autifyはとても使いやすいので、もっといろんなことが試せるんじゃないかと思いますし、いろいろな機能を活用させていただきながら、常により良い形を目指して取り組みたいです。
ー最後に2社さまからお知らせがあればどうぞ。
Human Crest米田さん: ヒューマンクレストはグループ全体で170人ぐらいの会社ですが、1社1社の状況に合わせてオーダーメイドでやらせていただいています。QAチームの立ち上げなど一生懸命やっていきたいと思っていますので、もしお困りの方がいらっしゃいましたら、お声掛けください。
Slogan渡邊さん: 弊社は昨年11月に東証マザーズ(現・グロース)に上場しまして、今、事業拡大に向けて種を蒔いているフェーズです。人材事業がメインではありますが、人材紹介だけにとどまらず、「人」を軸にさまざまな事業を広げていきます。これから新しいプロダクト/サービスを作っていきたいと思っています。
人材系に興味がある方や、「人」というキーワードで、なにか新しいものを生み出すことを目指したい方がいれば、開発やサービス作りでスローガンに関わっていただけるとありがたいです。さまざまなポジションを募集していますので、よろしくお願いいたします。
ー本日はありがとうございました。
(聞き手:オーティファイ株式会社 CEO 近澤 良)