Customer Stories

「コードが書けない私にとってAutifyが希望になった」みんなが走れるレールを敷くQAエンジニア、テスト自動化までの道のり

CEO 中尾 達也 氏、QAエンジニア 早川 侑里 氏
Company
株式会社タンバリン
https://www.tam-bourine.co.jp/
Industry
System Integrator / Salesforce Integrator
Publish Date
March 17, 2021

単なる受託開発にとどまらず、クライアントやパートナー、外部のプレイヤーたちとチームを組み、サービス開発や課題解決に取り組む——時代にマッチしたビジネスのあり方だ。

それを実践している企業が、Salesforceなどのクラウドプラットフォームを活用したサービス開発を手がけている株式会社タンバリン

企業のニーズを汲み取りながらスピーディな開発を進める一方で、品質の担保も欠かせない。同社の品質保証を担うのが、第三者検証の会社を経て2020年に入社したQAエンジニアの早川 侑里氏。彼女が旗振り役となって進めてきたテスト自動化と品質保証の運用体制づくりとは?

また株式会社タンバリン代表取締役CEOの中尾 達也氏に、テスト自動化の重要性と受託開発会社ならではの経営課題について話を聞いた。

人力では限界が……。複数の端末×ブラウザでの全検証

— Autifyを導入していただく前は、どのような課題がありましたか?

中尾さん: あるECサービスのプロジェクトで、納期までの進行スケジュールとタスクを検討したら、手動のテストではどうしても間に合わないことがわかりました。プロジェクトの早い段階からテストの自動化を進めて、開発を効率化しなければならなくなり、いくつか検討しました。

Seleniumなどのオープンソースのツールもあったのですが、エンジニアじゃなくてもシナリオを作れたり、リグレッションテストの計画ができたりするものを探していてAutifyに辿り着きました。

— 御社の場合、テストはどのあたりが大変なのでしょう?

中尾さん: 複数のデバイス、ブラウザでのチェックに手間が掛かるので、人力だと終わりが見えません。ECサービスの場合、購入できないなどクリティカルな不具合があると、多額な損失が出ます。そのため複数デバイス、複数ブラウザでの検証をパスすることが、ローンチの必須条件になる。品質を担保しながら、効率化することが弊社の課題で、導入を検討しました。

— ECサイトの場合、想定ユーザーの端末の機種も多いですし、画面サイズもバラバラで、クロスブラウザでのチェックも含めると全検証はかなりヘビーですね。

中尾さん: 社内で検証端末を購入していたのですが、コロナの影響でフルリモートになり物理的に難しくなりました。ほかにBrowserStackという検証ツールも候補でしたが、自動化するための準備に手間が掛かりそうということもあり、スマホの端末検証がカバーされている点でAutifyは魅力でした。

— リモートワークが増え「検証端末の管理が難しい」という話は最近よく聞きます。「検証端末を使うために、出社する」や、「Aさんが今使っているから、終わったらBさんに送ってください」みたいなことも。

早川さん: 私たちはテスト専門の会社ではないので、端末のカバレッジが取れていない現実があります。端末を全部揃えるよりも、全部できてしまうサービスを利用するのが手っ取り早く、その点においてAutifyはとても魅力的です。

保守運用のテストを自動化し、新規開発にリソースを割く

早川さん: もうひとつの課題は、保守運用における追加開発です。新機能を追加するたびに実行するリグレッションテストが人力だと、かなりのリソースを割くことになります。運用保守は長期的な取り組みなので、小さいコストでも積み重なると大きい。また、機械化してミスを出さないことも自動化の利点です。ミスは誰しも起こり得るので、人力だとバグを引いてしまうこともあります。テストの工数を減らしたことで新しい開発を進められる。そういった理由からも品質を守りながらコスト削減することが重要になってきています。

— 保守運用の案件を効率化して、新規案件に前のめりに動く「下支え的な自動化」が求められているということですね。

中尾さん: はい。タンバリンでは創業以来、大手企業のB2C向けのサービスを作ってきました。そのほとんどのプロジェクトが、開発して終わりではなくて、継続開発になります。今までは、開発したメンバーがそのチームに残って追加の開発や保守的な部分を続けてきました。

近年は、企業のビジネスそのものを支えるようなサービスなどの案件が増えてきています。補修や継続開発など弊社の責任の範囲が広がってきているなかで、これまでやってきたプロジェクトの人員の配置を最適化する必要がある。それが経営課題でもありました。

ノーコードでのシナリオ作成と画面キャプチャ機能が決め手に

— Autifyを導入する決め手になったものはありますか?

中尾さん: エンジニアは開発に掛かりきりになることが多いです。クライアントに近い立場のPMやディレクターがシナリオを簡単に作れるのが、大きな決め手になりました。テストシナリオをうまく作れば、ほかの似たようなプロジェクトでも繰り返し使える。あるいは1つのプランをエンハンスしていくことができそうだと、Autifyの管理画面を見ながら思いました。

早川さん: もう1つは、自動で画面キャプチャが撮れることです。弊社は受託の会社ですので、納品時にクライアントから画面キャプチャを求められることがあります。キャプチャ機能が備わっている自動化ツールはなかなかないので、Autifyでキャプチャを一括ダウンロードできるのは、決め手になりました。

— 導入後は、案件ごとに早川さんがレクチャーしていくような取り組みをされてるんですか?

早川さん: シナリオをどう設計していくか、社内のテストに関する知識やナレッジの底上げが課題と捉えています。 私もまだまだ知識と経験が足りない部分があるのでAutifyのカスタマーサクセスの方にフォローしていただいています。先日は、自動化カンファレンスに参加して学ばせていただきました。

中尾さん: 早川さんは最短の達成経路の作り方や効率化など、テストの考え方をプロジェクトの中に入ってスキルトランスファーをしてくれているので、QAとして理想の動きをしてくれています。エンジニアも含めて意識付けができて、お客様とのコミュニケーションもスムーズになりました。

ナレッジを共有して、自走できるようにレールを敷く

— 素晴らしいですね。Autifyを導入されてからは、まず早川さんがテストシナリオを作ったのでしょうか?

早川さん: 私からプロジェクトチームのメンバーに「どういうテストがしたいか」「今までどんなテストをしてきたか」をヒアリングし、品質担保のために足りないところを洗い出すところから始めました。そして、テストの考え方と組み立て方をメンバーに伝え、シナリオを作ってもらいました。少し時間が掛かりましたが、シナリオ自体を私が作ってしまうと依存してしまい、意味がないと考えたためです。

タンバリンの社員数が今70名、QAは私1人だけなんです。最初に私が全部やってしまうと、その後もすべての案件を私がやらなければならなくなりますよね…。1人でさばける量は限られているので、いかに私のナレッジを共有していくかに重きを置いています。自走できる体制にしていかないと、自分も苦しくなるし、お客様にもご迷惑を掛けてしまう。自走できるようレールを敷くのが私の役目ですし、そのほうが価値があると思っています。

— コーチングに徹したということですね。皆さんスムーズに使っていただけましたか?

早川さん: スムーズに使えた人もいますし、難しい人もいます。私は以前に、教育関係を学んだことがあり、一人ひとりの個性や向き不向きは絶対にあると思っています。しっかりその人に向き合って、どうアプローチしていくかを自分なりに考えていかなければいけない。「Autifyをこう説明したら使いやすい」や、逆に「こういう説明では、つまづいてしまう」と分析したうえで、伝えていくよう心掛けています。

中尾さん: 早川さんは、社内でも「Autifyをなぜ入れるか」というZoomセミナーを開いてくれています。PMのチームも「こんなことができるんだ!」と驚いていました。

クライアントにも、テスト自動化の価値を届ける

—中尾さんは、企業のトップの視点から、テスト自動化に関してどう捉えていますか?

中尾さん: 人的リソースの最適化に課題があるなかで、その1つの解決策として、テスト自動化は重要です。いくつかのステップがありますが、まずは社内でAutifyの使用感と成果を探っていく。成果が実感できたら次に、お客様にその価値を認めてもらい、お客様とともにシナリオを考えるなど、継続的な開発と運用を進めていく。そのプロセスを踏むことによって、ツールを導入することと予算をセットで提案できるのではないかと思っています。

クライアントは、テストに課題を感じている企業とそうでない企業に二分されるので、まずは価値の共有が必要です。たとえば、お客様が受け入れテストに時間を掛けているのであれば、その工数を減らすことでプロモーションやマーケティング、クリエイティブに注力できる。Autifyで得られるものは効率化だけではなく、その先の成果物に価値があると思っています。

— 実際にAutifyを導入してみて、どのような変化がありましたか?

早川さん: 先ほどもお話した、複数端末・環境での検証がAutifyでカバーできるようなったことや、プログラミングが得意でなくても自動テストを実行できるようになったことは大きな成果です。また、リリース前チェックとリリース後チェックが自動化できたことも大きな利点だと感じています。同じテストシナリオを繰り返し使うので、都度テスト設計をする必要もない。ポチッとするだけで終わります。1回のテストごとに1人/日くらいのリソースを削減できました。

その分、追加開発の手動テストに人員を回したりテストのナレッジを貯めるための資料作りをしたり、別のことに時間を割けるようになりました。

中尾さん: 早川さんの尽力により、人から人へ伝わって社内でもAutifyを扱える人が徐々に増えています。さらに開発チームの中で、品質に対する意識が少しずつ高まってきているようにも感じています。ほかのプロジェクトにも広めていくことが次の段階だと思います。

システムの安定があるからこそ、アイデアをのびのびと試せる場を提供できる

— 今後の展望についてお聞かせください。

早川さん: 今はレクチャーしながらテスト設計をしているステップですが、今後は取り扱える人を増やしていきたいです。PMは負荷が高い役職なので、テストをより簡略化して運用保守チームなどに移譲できるように。新たに発足するQAチームでは、QA視点を育てて、一人ひとりが高いクオリティで、品質保証の手段を選べるように。人員の問題などいろいろありますが、全社で品質保証に取り組んでいきたいです。旗振り役になってレールを敷き、そこを走ってもらうというのが、私の役割として求められていると思っています。

IT業界全体でQAに対する意識が低い会社もまだまだありますし、私も実際に見てきているので、変われるきっかけづくりにも興味があります。QA担当者がもっと仕事がしやすくモチベーションが上がっていくような世界を作っていきたい。代表の中尾さんが掲げる「Let’s PARTY!」という社訓があります。そこに則った強いQAチームを作った上で、対外的なカンファレンスなどに参加して伝えられたらと考えています。目標はJaSSTに出ることです。

— きっと出られると思います!組織のトップの立場から、中尾さんの展望についてもお聞かせください。

中尾さん: 企業がデジタルのチャネルでビジネスをするケースが増えていますし、その根幹になるサービスを作ることが弊社のミッションです。マーケティング、デザイン、UXなどクライアントからの高いレベルの要求に応えることが我々の幸せで、PMやディレクター、エンジニアの喜びでもあります。

そのためには、ただ作って楽しいだけではなくて、システムを安定稼動させなければなりません。安心、安全ななかで新しいアイデアを伸び伸びと試していける環境を作るのがとても大事なことだと思っています。「Let’s PARTY!」は、お客様と一緒に仕事をしようというところをビジョンに掲げているものですが、お客様とハイタッチしながら仕事するには、地道な努力や、自分たちを律することが必要です。

その基礎的な部分である品質を支えてくれているのが早川さんです。テストの重要性をお客様と共有して一緒にプロジェクトを進めていく。その価値を見い出すことがまさに、私がタンバリンとしてやりたいことでもあります。

Autifyが希望になった。コードが書けなくても、自動化を諦めないで

— 最後に、これからテスト自動化に取り組む方々へのメッセージをお願いします。

早川さん: 私はQAエンジニアしか経験してこなかったので、実はコードが書けません。前職で「コードが書けないなら自動化は無理」と言われたこともあります。自分でも、どこか諦めていた部分もあったんです。そんな私に希望を与えてくれたのがAutifyです。品質保証への方針をしっかり決めたうえで運用していけば、私にも自動化できるというのは、大きな救いでした。

テストにつまづいたり、どうしたらいいか分からなくなったりしたら、ぜひAutifyを試してほしいと思います。「自動化を諦めないで」「ノーコードでも大丈夫」と伝えたいですね。私みたいに希望を感じる人や企業が増えて、テストや品質に関する議論がもっと活発になったら、すごく嬉しいです。

(聞き手: オーティファイ株式会社、CEO & Co-Founder 近澤 良)