リースやファイナンスにとどまらず、企業の設備投資支援や事業戦略の実現を加速させるみずほリース株式会社。みずほフィナンシャルグループのネットワークを活用し、国内外の多岐にわたるニーズに応えることで、顧客のビジネス価値の最大化を目指している。
同社は近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組んでおり、Salesforce上に構築したCRM(顧客管理システム)とSFA(営業支援システム)の機能改修・保守運用の内製化を進めている。ビジネスを迅速に進めるために、これらは欠かせないものとなっている。
一方で、内製化にあたって課題となったのがソフトウェアテストだ。日々移り変わるビジネス要求への対応に加え、Salesforceの年3回のバージョンアップによる影響を最小限に抑えるためにテストは欠かせない。しかし、そのための人的リソースと工数確保が課題となっていた。
そこで同社は、 Autify NoCode Web(ノーコードテスト自動化ツール) と Autify Pro Service (自動化を前提とした伴走型品質保証支援サービス)を利用することで、この課題の解決に取り組んでいる。今回は、情報システム部兼デジタル推進部 宮谷(みやたに)様と、同情報システム部の安生(あんじょう)様にお話を伺った。
ー まず、自己紹介と担当しているシステムについてお伺いしてもよろしいでしょうか?
安生様:情報システム部に在籍している安生 敦子と申します。現在、Salesforce上に構築したCRMシステムの機能改修や保守を手掛けています。
宮谷様:宮谷 伸也と申します。私は情報システム部でインフラ全般を担当しており、併せてデジタル推進部も担当しています。現在、Salesforceを活用してビジネスの拡張を目指していますが、これらのシステムを効果的に運用するためには、ベンダー様に全てをお願いするのではなく、弊社自身で開発・テスト・運用・保守を進めていく必要があると考えています。
ー Salesforceを利用する中で、ベンダー様に依頼するのではなく自社で対応しようと考えられた背景についてお聞かせいただけますか?
宮谷様:ビジネスが自分の考えている以上のスピードで進んでいることを実感している中、 3ヶ月後、半年後といったスパンでの機能実装では遅れを取ってしまう のを目の当たりにしてきました。この状況が近い将来さらに顕著になると考えたとき、従来のようにベンダー様へ依頼し、要員が確保できるかどうかを確認するというようなことからスタートしている時点で、ビジネスにおいて求められるスピードを出せないと感じていました。そこで、IT部門として新たなやり方が必要だと考え、内製化という方向に大きく舵を切り直しています。
ー Salesforceやそれに連携しているシステムの品質について、以前にはどのような課題があったのか教えてください。
安生様:Salesforce本体の年3回のバージョンアップやシステムの機能改修、社内のWindowsパッチ適用のたびに、リグレッションテストとして、手動で打鍵を実施する必要がありました。この頻繁な作業が手動ゆえに大きな負担となっていました。作業の優先度を考えると、通常業務の空き時間でテスト確認を行うことが多く、 本来ならすべてのテストケースを網羅すべきところを、実施範囲を絞らざるを得ない のが大きな課題でした。
宮谷様:人手が足りず、ワンタイムで応援をお願いしたり、テストのやり方そのものを教える必要があったりといった負担も大きかったです。
安生様:そうですね。Salesforceに慣れている方なら問題ないのですが、慣れていない方にはログイン手順などの基礎的な部分から説明する必要があり、教える側の負担が大きかったです。
ー 作業を担当されたメンバーは貴社の社員のみでしたか、それともベンダー様など外部協力企業の方々も入られていましたか?
安生様:委託が可能な範囲ではベンダー様にお願いしていましたが、コストの兼ね合いもあり、可能な限り弊社内で手分けして実施していました。
宮谷様:加えて、これまではそのような形で回すこともできたのですが、Salesforceのプラットフォームを活用し始め、さらに機能拡張を進める中で、小規模な機能追加の頻度が増加しました。それに比例する形でテストの負担そのものも増えてきたのではないかと思います。
ー ビジネスのスピードやプロダクトの品質など様々な課題がある中で、どのような優先順位で課題に取り組まれていたのかを教えて下さい。
安生様:当初は自動化ツールを検討しておらず、手動テスト作業に対していかに人員を確保するかということに焦点を定めていました。ですが、先に述べた通り、システム改修を優先すると、リグレッションテスト時間が十分確保できず、最低限のテストに絞らざるを得ないのが最も大きな課題でした。そのため、これを解消するツールの導入を検討しようと考えるようになりました。
宮谷様:スピードを優先するか品質を重視するか、常に両天秤に掛けざるを得ない難しい状況でした。テストを何とか効率化できないか、ということは我々にとって重要な課題でした。
ー この課題を解決するために、どのような観点でソリューションを選定したのでしょうか?
安生様:テストを自動化するツールがあること自体は知っていたので、比較サイトやウェビナーを活用して候補を2つほどに絞りました。観点としては、自動化によってどれだけ負担を減らせるか、使いやすさ、そしてメンテナンスのしやすさを重視しました。各ツールのウェビナーでの説明を通じて使い勝手なども含め比較検討を行いました。
宮谷様:実を言うと、そこまでしっかり調査していたとは知りませんでした(笑)テスト自動化ツールの効果は一定程度理解していましたが、当社への導入についてはまだまだ時期尚早なのではないかと思っていました。ですが、現場で担当してくれている安生さん自身が、ここまでしっかり下調べをして、導入への強い希望を伝えてくれたことで、私としても迷いなく導入の意思決定を行うことができました。
ー 安生様の入念な下調べが、導入を決定する重要な要因になったのですね。
宮谷様:そうですね。現場で担当している人が一番状況や課題を把握していると思うので、その人が調べて「使いたい」と思ったものは、少なからず良い点があると考えています。
ー 安生様がツールの提案をして導入を進めるきっかけとなったと思いますが、安生様を突き動かしたモチベーションはどういったものでしたか?
安生様:手動でのリグレッションテストの負荷は、システムに携わる全員の共通課題として認識されていると感じていました。周囲が案件対応で忙しい中、自分が比較的余裕があったため、自分が動かなければと考えたのが正直なところです。
宮谷様:私としては単純なテストを人が行うべきなのか、という疑問は以前からありました。ただ、「自動化できる」と耳にすることはあっても、実際にそれを進めるのは難しい側面がありますよね。特に私たちのような環境や組織に適したツールとなると選択肢は多くありません。そうした中で、このツールが世の中に登場したことは非常に大きいと感じます。これが、例えば様々なツールを組み合わせて使うようなものだと、私達にとっては活用が難しいものだったかもしれませんね。
ー チームのバックグラウンドやエンジニアリングに対する知識によって、使いやすいツールは変わってくると思います。実際に選ぶ基準として、メンバーの特徴やバックグラウンドがどのように影響したのかお伺いしたいです。
安生様:情報システム部のメンバーは、システム開発には携わっているものの、高度なコーディングなどは難しいと感じています。そのため、視覚的に分かりやすく、テストケースやシナリオ作成が容易だと感じたのがAutifyを選んだ理由です。
宮谷様:私たちは一般的なユーザー企業(※)の情報システム部です。そのため、いわゆるプログラミングの専門家ばかりではありません。営業出身のメンバーもおりますし、多くの人達はテストの基礎を独学で学んでいます。こうした多様なバックグラウンドを持つメンバーでも使いこなせることが、ツール選定の重要なポイントでした。
※ユーザー企業)ツールやシステムを使う側の企業を指す。対義語はベンダー企業。
ー 今回、Autify NoCode Web に加えて、 Autify Pro Service も導入していただいています。 トータルで Autify を選んだポイントについて詳しく教えていただけますか?
安生様:まず、NoCode Webについては、現場のメンバーの納得を得られたのが大きなポイントでした。ウェビナーに参加した後、営業担当の方からご連絡を頂き、現場のメンバー全員に対してツールの使い方やメリットについてご説明していただきました。それにより、導入による負担の軽減などについて関係者全員の理解を得られました。
宮谷様:SaaSの場合、適切なサポートがなく、ただ「使ってください」で終わってしまう場合も多いかと思います。しかし、Autifyの営業やテクニカルサポート、そして Autify Pro Service の方々が、私たちチームの実力も踏まえて「本当に使えるようになるためには、何が必要か」を深く考え、サポートしてくれました。それが「使ってみよう」と思えた大きな後押しになりました。結果的に、導入後もさらに活用したいと思えるようになったのは、これらのプロフェッショナルなサポートのおかげだと思います。
ー Autify Pro Service をAutify NoCode Webと併用することにより、基礎となるシナリオが存在する状態から利用を始められたことは影響がありましたか?
安生様:非常に大きかったです。導入時に作成いただいたシナリオを基に自分たちで作成・改修を進めています。ハードルを感じつつも、教えていただいた技術を活かして進めていきたいと思っています。
宮谷様:安生さんがしっかりキャッチアップしてくれたことも、大きな要因だと感じます。安生さんはSalesforceの認定資格を保有しており、この強みを活かしながらAutifyのカスタマーサポートとインタラクティブにやりとりして、スムーズに疑問を解消してくれました。社内に自走できる人材が育ってきているのはとても良かったなと思います。
ー 承認にあたっては、どのような観点を重視しましたか?
宮谷様:手動テストとの比較や、ベンダー様にお支払いしている金額との差など、コストメリットは確かに重視しました。ただ、それ以上に重視したのは、 開発・テストスピードの向上や、ベンダー様に頼らずに自分たちで持続的に運用 できる点です。IT組織全体として「テストをどうにかしなければいけない」という共通認識があったことも、関係者間の合意を得やすかった理由だと思います。
ー 導入に際して、大きなハードルはありましたか?
安生様:私の体感としては、Autifyを「試してみたい!」と会社に提案した際に、スムーズに了承していただけたのが嬉しかった印象があります。ですので、これといったハードルは感じませんでした。
宮谷様:会社の方針として、現場の「やりたい」という気持ちや意見を優先する環境を整えるようにしています。そのため、提案が上がった時点で「組織としてどう活用していくか」をまずは考えました。特に大きなハードルや難しいことはなかったように思います。最大の懸念は、私たちが使いこなせるかどうかでしたね。
安生様:そうですね。逆に言えば、すぐに承認を得られた分、「ちゃんと使いこなさないといけない」という使命感を持って取り組めているのは確かです(笑)
ー 現時点で、定性的または定量的な成果が出ている部分があれば教えてください。
安生様:テストケースは約800ケースあり、 Autify Pro Serviceの方々にサポートしていただいたことで、そのうちの6割以上をAutify NoCode Webで自動化しました。これにより通常業務やシステム改修・開発に時間を割けるようになったため、非常に良かったと感じています。
宮谷様:定量的には、時間の短縮や品質の向上といった効果が出始めました。定性的には、情報システム部内に「ツールを利用して効率を上げよう」「各自で能動的に学ぼう」といった前向きな雰囲気が生まれたことです。以前は「辛くても人手で頑張ろう」というような考え方にとらわれてしまっていたので、大きなマインドチェンジだと思います。
ー 導入後、プロジェクトへの適用に際して苦労した点や気を付けるべきポイントはありますか?
安生様:今まさに苦労している真っ最中です(笑)。Salesforceは本番環境の他にテスト環境も複数あり、現状のシナリオはそれぞれの環境でしか動かせない作りになってしまっています。今後は例えば、Salesforceのバージョンアップのための新しい環境を整備し、それをベースに稼働確認を行いながら本番環境でも自動化できるよう対応を進めています。今後、担当者間でその進め方を話し合う予定です。
宮谷様:当社では一つのSalesforceプラットフォーム上に複数のベンダー様が存在するため、マルチベンダー環境で使う難しさがあると感じます。この点についてはどうですか?
安生様:現時点では自社環境のみで動かしていますが、将来的にベンダー様や他のシステムでも活用できれば、より大きな効果を期待できると思います。
宮谷様:今後スケールアップする中で、関係するベンダー様の基準に合わない点が出てくる可能性もあります。その際にどう調整するかが課題になるかもしれませんね。
ー 導入前後でチーム体制に変更はありましたか?
安生様:現状では中心メンバーが3人で運用を進めている段階です。他のメンバーにも興味を持ってもらえれば広がりそうですが、まだそこまでは至っていません。まずは自分たちで試行し、徐々に広げていきたいと考えています。
宮谷様:導入してまだ数ヶ月なので、現時点では組織全体に大きな変化はありません。ただ、今後数年スパンで見れば、システム更改などを含めた全体を考えた際にチームのあり方は間違いなく変わると思います。テスト自動化ツールのノウハウを持つメンバーやチームがシステム更改の際には指南役になるなど、新たな役割が出てくると思います。
ー 今後Autifyに期待することがあれば教えてください。
安生様:ブラウザがクラウド上で動作している兼ね合いもあり、弊社独自の設定を反映できません。この部分の自動化が可能になれば非常に助かるので、実現を心待ちにしています。
宮谷様:2点あります。1つ目は、開発ツールやCI/CDツールなど普段使用しているものと統合され、より効率的になることです。「知らないうちにテストが終わっている」ような世界が来ると理想的だと思います。2つ目は、テストを自動化するということ、自動でテストが完了するという考え方が広く受け入れられるよう、啓蒙活動をしてほしいということです。
ー 同業の方にAutifyのことを伝えるなら、どう説明しますか?
安生様:コードを書かず、GUIでの操作をそのままシナリオ化できる点が非常にわかりやすいと伝えたいです。また、シナリオ(※テスト結果)を動画で確認できる点も大きな魅力です。
ー ところで、今回のAutify導入をきっかけに、他のツール導入に関する要望は出ていますか?
宮谷様:
今のところ現場から目立った要望はありません。古いシステムやクライアントサーバー系の環境が残っているため、Webアプリなどに比べてツールの新規導入が難しい場合が多いからだと思います。しかし、Autifyのプロダクトは非常に導入がしやすく、組織定着もスムーズでした。今回安生が本件の導入プロジェクトを推進してくれたことで、ツールを新規導入し業務を効率化する流れの第一歩が踏み出せたと思います。
ー クライアントサーバー系のシステムからWebアプリに移行するときにも、ぜひ Autify NoCode を使ってテストしていただけると嬉しいです(笑)本日はありがとうございました!