GMOインターネット株式会社(以下、GMOインターネット)は、長年にわたりインターネットインフラ事業を支え、堅牢かつ多様なプロダクトを展開してきた企業であり、スピードと品質の両立を重視したアジャイルな開発体制を特徴とする。その開発組織は東京(渋谷)と北九州の2拠点体制でありながら、地理にとらわれないプロジェクト単位でのクロスファンクショナルなチーム編成により、リモートでの協調と柔軟な人員配置が可能な「バーチャル開発体制」を確立している。
Autify導入の背景には、フレームワークやRDBのバージョンの更新やクラウド移行に伴うリグレッションテストの負荷があり、長期運用されるプロダクトにおける品質確保と効率化が急務だった。ツール選定では、導入コスト、学習容易性、サポート体制、ROIを重視し、Autifyの「すぐ使える操作性」と「手厚いカスタマーサクセス」が評価された。
導入から2ヶ月で、主要な4つのアプリのリグレッションテスト自動化を完了。現場では「見落としが減った」「安心感が増した」との声があり、品質文化の定着やテスト再設計といった前向きな変化も見られている。今後は、リリースサイクルの高速化と品質保証の強化を目指し、自動テストのカバレッジ拡大や、CI/CDとの連携による本番環境でのリグレッションテストの実現にも注力する方針である。
― 本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは自己紹介をお願いできますか?
安藤さん
GMOインターネット株式会社アプリケーション開発本部の安藤です。プロダクトのアーキテクトや技術選定、最近ではプラットフォームエンジニアリングとして、エンジニアの開発体験や生産性向上に取り組んでいます。
山田さん
同じくGMOインターネット株式会社 アプリケーション開発本部で副本部長をしております山田です。今回、Autifyの導入と展開をリードする体制構築を担当しました。
谷中さん
アプリケーション共通チームのマネージャーを務めている谷中です。ブランド横断の業務効率化やモダン化、新ツールの導入などを推進しており、Autify導入においては予算検討や性能評価を担当しました。
遠矢さん
私はアクセス開発部とくとくBBプロダクトチームに所属する遠矢です。現在はAutify活用のアンバサダーとして、社内へのノウハウ展開やテスト文化の醸成に取り組んでいます。
― Autifyを導入した背景について教えてください。
遠矢さん
課題だったのは、リグレッションテスト(回帰テスト)の負荷ですね。ライブラリやフレームワークのバージョンアップで仕様変更がなくても、広範なテストが必要になり、工数が膨らんでいました。そこを自動化できれば、本来注力すべきテストや開発に時間を使えると考えました。
安藤さん
我々は20年以上運用されているようなシステムも多く、その裏側を刷新していくにあたって、見た目には変わらないが中身は大きく変えるという状況がよくあります。その裏側の変更に伴う影響範囲を確認するためのリグレッションテストが、やはり大きな課題でした。
山田さん
品質とスピードの両立が求められる中で、スピードを優先すると品質がおろそかになるリスクがあります。一方で品質を優先してリリースが遅れるのも避けたい。テストに関して流動的に人員を動かして対応していましたが、限界を感じていました。
― Autifyを知ったきっかけと、導入の決め手を教えてください。
安藤さん
以前からAutifyは知っていましたが、当時はオンプレミスサポートの関係で見送りました。今回再検討の際に、カスタマーサクセスの支援がある点も含めて改めて声をかけさせていただきました。
谷中さん
複数ツールを比較した中で、決め手となったのは「使いこなせるまでの期間の短さ」でした。PoC開始からすぐにフィードバックがあり、他ツールでは難しかった「すぐ使える」という感覚が得られたのが大きかったです。
山田さん
カスタマーサクセスや営業の方々の支援体制が非常に安心できた点も大きな要因でした。導入後のサポートも非常に丁寧で、週1の定例ミーティングなど、信頼できる対応をしていただいています。
― 実際の活用状況について教えてください。
遠矢さん
とくとくBBの入会ページや会員専用ページで活用しています。入力フォームの一連の流れをレコーディングし、正常に完了するかを確認するテストを自動化しています。手動で行っていた作業が、自動で回るようになりました。
谷中さん
導入から2ヶ月ほどですが、主要な4つのアプリケーションについては正常系のリグレッションテストが自動化できています。リリース頻度は週1程度で、そのタイミングでテストが回せる体制が整ってきました。
― Autifyを導入したことで、テスト運用における変化はありましたか?
谷中さん
ありました。これまで各プロダクトチームでテストのやり方がバラバラで、いわゆる“個別最適”の状態でした。しかし、Autifyを導入してからは、作成したテストシナリオがクラウド上で誰でも見られるようになったことで、「他チームはこういう設計してるんだな」とか「この観点、うちのチームにはなかったな」という気づきが増えました。自然とチームを横断して「この観点、うちでも取り入れよう」といった会話が生まれるようになり、今は開発とテストのやり方をどう共通化・標準化していくか、というフェーズに入ってきている感覚があります。Autifyがその“共通言語”になってくれている印象です。
遠矢さん
自分の目線でもすごく感じています。他のチームが作ったシナリオが並行して走るので、「こういうテスト観点も必要だな」と自然に学べるんですよね。結果として、自分のチームだけではカバーしきれなかった領域まで品質が広がっている実感があります。以前は閉じた世界で完結していたテストが、Autifyによって“見える化”されることで、チームを越えてナレッジが共有され、全体としての底上げにつながっていると思います。
― 投資対効果(ROI)についての見込みはいかがでしょうか?
谷中さん
事前に手動テストとのコスト比較を行い、何回テストすれば費用対効果が出るかを試算しました。今のペースで進めば、今年度中(2025年10月頃)にはROIを達成できる見込みです。
― 今後、Autifyを活用して取り組みたいことはありますか?
山田さん
リグレッションテストの範囲を広げ、リリースのスピードと品質の両立を実現したいですね。プロダクト価値を高める好循環をつくっていきたいです。
遠矢さん
検証環境だけでなく、将来的には本番環境での簡易的なリグレッションテストも視野に入れています。ゆくゆくはブランチ単位でのテストも導入できればと考えています。
― 最後に、Autifyに対するご要望があればお聞かせください。
遠矢さん
シナリオや結果一覧のUI改善ですね。ラベルの付け方や検索のしやすさがもっと直感的になるとありがたいです。
谷中さん
Slack通知は現時点ではワークスペース・テストプラン単位での設定ですが、特定のラベルがついているものだけを通知したり、メンションを追加したりなどができると嬉しいです。自動化ツールが「使うもの」から「当たり前の一部」になるには、開発の流れに溶け込むことが大事だと思っています。
テスト結果のラベルによるフィルタリング
テスト結果はメール・Slackで通知できる。ワークスペースまたはテストプラン単位で通知先を選べる
ありがとうございました。Autifyの導入によって、現場の安心感やチーム間の連携が自然と生まれ、組織全体のテスト文化も前進している印象を強く受けました。さらなる進化が本当に楽しみです。